2.犬や猫の鼓膜のおはなし

今回は、耳の内視鏡「鼓膜について」のお話です。厳密にいうと、水平耳道から鼓膜までの構造や特徴についてのお話になります。

外耳炎の時に行われる耳鏡やVOS(ビデオトスコープ)による検査は、耳の入り口から鼓膜までの耳垢の性状や、耳道の状態、鼓膜はどうなっているか?までを観察しています。
特に鼓膜付近の観察は外耳炎の治療にはとても大切な場所です。
鼓膜は、外耳と中耳を隔てる膜のことで、音を振動に変えて内耳に伝える役目をしています。
鼓膜は、上の図の白っぽく見える鼓膜弛緩部と下の半透明の鼓膜緊張部で構成されています。
VOS(ビデオオトスコープ)検査(下の写真(写真左))で見るとこんな感じに見えます。

耳道と鼓膜の付着しているあたりからは、耳毛(写真右)が生えていて耳毛の多い犬種などは耳垢が絡んでしまい耳垢の排出がうまくできずに外耳炎のおこす一因であると言われています。
■耳の部位別の役割
外耳は、音を集音して鼓膜で音を振動に変換をします。
中耳は、音の増幅と耳の防御や排水、換気などの役目をしています。
内耳は、音の振動を神経刺激への変換と旋回の認知、重力を脳に伝える役目をしています。
外耳炎の治療を行う場合は、この鼓膜付近の状態を観察しながら現在どういう状態なのかを耳鏡検査で確認して治療を組み立てていきます。水平耳道(A)は、頭蓋骨に侵入する部分でやや凹んだ構造をしており、この部分が耳垢が堆積しやすい構造をしています。水平耳道と鼓膜の接合する部分(B)も、V字状に少し窪んだ構造をしているため、このAとBの部分に耳垢が堆積してしまい外耳炎がなかなか治らない場合が多いと言われています。また、水平耳道のこの凹んだ部分(A)から、耳毛が生えているため耳毛の多い犬種などは耳毛と耳垢が絡んでしまい外耳炎の慢性化の起因となるとも考えられます。

耳道の構造に特徴のある犬種もいます。パグは一般的な犬種に比べて耳道が狭く、フレンチブルドッグは縦長の構造をしているため耳の病気が多い犬種です。パグもフレンチブルドッグも外毛が硬いため、耳の中に落下した外毛が鼓膜に刺さった状態で観察されこれが痛みや痒み、炎症の原因になっていることもあります。
そして、 慢性外耳炎や再発を頻繁に繰り返していると、脂腺や耳垢腺の過形成などの炎症が慢性化し改善できていないサインが見られる場合があります。改善されない原因は先天的なもの(脂漏犬種、耳毛など)・後天的なもの(内分泌、腫瘍、環境など)など様々な原因があるため、その原因を突き詰めながらなるべく良い状態に改善できるように治療を考えていきます。

鼓膜付近に異常のあった子の例
●1−2ヶ月程前より、耳を痒がっているという子です。


VOSで耳道内を検査したところ、腺の過形成と耳道の狭くなった部分に耳毛を絡めて巨大な耳垢が存在しました。耳道洗浄で巨大な耳垢除去しましたが、鼓膜弛緩部が腫れていました。

●耳垢により鼓膜穿孔の見られていた子
この子も鼓膜の手前に巨大な耳垢が詰まっていました。経過が長かったと思われます。摘出後、鼓膜穿孔が見つかりました。

●真珠腫性中耳炎をおこしていた子

鼓膜が丸く隆起しています。時間はかかりましたが、治療により改善してくれました。

耳洗浄や耳掃除と点耳液や飲み薬を処方されたが、なかなか改善されない場合は、耳の奥に問題がある場合が多いです。
ビデオオトスコープでの耳の検査は、今まで見れなかった所を精細に診ることができます。耳の奥に問題があるときは、原因を除去することによりだいぶ落ち着いてくる場合が多いです。
犬や猫の外耳炎がなかなか治らない場合には、一度観察することも良いかもしれませんね。

〜〜〜こんな症状がみられたら、お早めに相談を!〜〜〜
□耳が痒い
□耳を擦り付けている
□耳が臭い
□耳垢が多い
□耳が赤い
□耳の周りが、脱毛や毛玉がある
□慢性外耳炎と言われている
□洗浄液や点耳液を常備している

#宮城県#仙台市#動物病院#ビデオオトスコープ#犬の外耳炎#猫の外耳炎#慢性外耳炎#治らない外耳炎


犬の慢性外耳炎:適切な治療とケアでここまで落ち着きます。

慢性外耳炎と診断され、かゆみや再発を繰り返していたり、点耳薬を常備薬として処方されているオーナー様は意外と多いのではないでしょうか?

今回は、慢性外耳炎と診断されたわんちゃんのお話です。
慢性外耳炎と診断され、点耳薬を処方されていたが再発を繰り返しているという相談でした。耳の洗浄後、耳の奥をのぞいていくと耳道の中が黒っぽくぷつぷつと耳垢腺が腫れていて耳道も狭くなっています。鼓膜周辺も、耳垢がびっちりと詰まってました。
治療方針を説明して定期的に通院してもらいながら、その子その子にあった治療を実施していきます。
治療後の写真
耳道内の耳垢腺の腫れもなくなり、耳道も広くなりました。鼓膜もきれいに観察することができるようになりとても良い状態になりました。
今後は、定期的に観察させていただき徐々に通院間隔を伸ばしていきます。
犬の外耳炎はいったんこじれてしまうと、通院回数もおおくなり、長期間治療するケースも多いです。また、慢性的に痒みや痛みを感じているため、治療を嫌がるようになってきます。できるだけ、早期に発見ししっかりと落ち着かせることがとても大切です。

〜〜〜こんな症状がみられたら、お早めに相談を!〜〜〜
□耳が痒い
□耳を擦り付けている
□耳が臭い
□耳垢が多い
□耳が赤い
□耳の周りが、脱毛や毛玉がある
□慢性外耳炎と言われている
□洗浄液や点耳液を常備している

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治らない犬の外耳炎:異物(ノギ)かもしれません。

散歩後に急に耳を掻くようになり、病院で点耳薬や薬を処方されたがなかなか改善しない。
そんな場合は、耳の中に異物が入っているかもしれません。
特に、イネ科の雑草「ノギの実」が悪さをしている場合が多いです。

今回の子も、散歩後に急に耳を気にするようになり、点耳薬や薬を処方されているがなかなか治らないとこのことで来院されました。

耳鏡で覗いてみると、
鼓膜に毛より何か太いものが刺さっているような感じです。
鼓膜に当たっているため、痛みを感じ気にしているようです。

オーナー様に異物の可能性を説明し後日、全身麻酔下にて摘出しました。

摘出後
右耳には4個、左耳に1個の異物を摘出しました。
散歩中に草むらで遊んでいる時に、ノギの実が耳の中に入り込んでしまったようです。
摘出後は、耳の痒がる症状はすぐに治りました。

散歩後などに、急に耳を痛がる(痒がる)、気にする、頭を傾けるなどの症状が見られた場合は、こういったケースが多いです。
また、耳だけではなく目や鼻の中に入ってしまうケースも経験があります。
草むら大好きなワンちゃんを散歩させる時は、要注意です!


大きな耳垢(耳垢栓塞):なかなか治らない犬の外耳炎は、耳の奥深くに原因があるかもしれません。

犬の外耳炎がなかなか治らない場合は、耳の奥に原因を除去しきれていないことが多いです。
今回は、耳垢栓塞のお話です。

■巨大な耳垢が、耳道と鼓膜を圧迫していたケース

一ヶ月ほど前から、耳を痒がっているということで来院されたRくん。
耳の中を確認するために、ビデオオトスコープ(VOS)で観察したところ、鼓膜近くに大きな耳垢が観察されました。耳洗浄を行い、大きな耳垢を除去しました。
大きな耳垢に押されていたようで、鼓膜が真っ赤に腫れています。
この大きな耳垢を除去後に観察すると、落下した毛と耳垢が混ざったものでした。
耳道内に落ちてしまった体表の毛に耳の分泌物が付着して大きな耳垢を形成してしまい、鼓膜を刺激して違和感や痛みを引き起こしたのではないかと思われます。

■耳の中に入りやすい異物としては、
 ①耳周囲の毛(カット犬種は、トリミング時にカットした毛)
 ②トリミング時のイヤーパウダー
 ③散歩時の植物の種や砂など

上に書いたものが、耳の病気の診察時に遭遇することが多いです。

■自宅での耳掃除が原因の場合もあります。
 耳が汚れているため、綿棒やティッシュなどでの耳掃除をしてあげたのですが、耳垢を奥に押し込んでしまい作られてしまうこともあります。

そのままにしておくとかゆみの症状が治まらなかったり、ひどい時は鼓膜を破ってしまい中耳炎や内耳炎などの原因になってしまう場合もあります。なかなかなおらない外耳炎や耳のかゆみのある時は一度耳の奥をチェックしてみることをお勧めします。


耳を掻く意外な理由!

耳が痒そうと来院される子の多くは外耳炎にかかっていて

炎症により痒みが続いています。

しかし、トリミング後から耳を掻くようになったチワワちゃんの耳を除いてみると…

耳の中は綺麗そうだな〜

ん?お!?おや???

耳の中に毛の束が…!!!!!!

器具が届きそうな位置にあったので取ってみると…

取り出した毛の束

小さいチワワちゃんの耳からこんなに大きな毛の束がとれました😵💦

今回のチワワちゃんはトリミング後から症状がでていたようですが、日常生活している中でも耳の中に毛が刺さっていることは珍しくありません💦

耳を掻くだけではなく、頭を振る行動も耳の痒みや違和感があるときにする行動です。

悪化すると痛みも伴うため、耳を触られるのも嫌がるようになります💦

症状がみられた時は、早めの受診をお勧めします🏥

看護師 中村