犬や猫の歯石とりは、ひどくなる前に実施しましょう。

犬や猫の歯石とり、毎回全身麻酔だしかわいそうと思うオーナーさんも多いかと思います。
しかし、歯垢にいる歯周菌の数はウンチに含まれている細菌よりも数が多いんです。
歯垢は、時間と共にだんだんと多くなってきて歯周ポケットに侵入し歯茎に炎症を起こしたり、歯周組織をどんどん壊していき炎症を繰り返して起こしてしまいます。

炎症を起こした時にでる物質が、血管に入り込んでしまうと全身にまわってしまいさまざまな臓器に病気を引き起こしたり、病態を悪化させる要因にもなります。

歯周病の予防(歯みがき)と治療(歯石とり)を行うことで、全身のいろいろな病気のリスクを下げることができ、健康に生活できる生涯も伸ばすことができます。
歯垢や歯石のつきはじめに早めに歯石とりをしてあげることは、とても大切なのです。

今回は、1歳のわんちゃんの初めての歯石とりのご紹介です。結構、早いタイミングなのでびっくりされる方も多いと思います。
(左)歯石除去前            (右)歯石除去後

左右の犬歯と奥歯に歯石が付着し、歯に接している歯茎も赤みを帯びています。
歯垢や歯石の付着を確認できる特殊なライトを当てると奥歯周りはほとんど歯石や歯垢で覆われていました。
これを、1本1本器具や機械を用いて歯垢と歯石とりを実施しています。
大まかな処置を終わらせて、引き続き歯科検診を行います。
肉眼で見える所見と、歯科用レントゲン装置を用いて歯の全体の写真を撮り歯全体の状態と何か病気が起きていないかを念入りにチェックします。
歯科レントゲン検査の写真

歯垢や歯石除去もとても大切ですが、歯の状態を観察するには歯科用レントゲンでの検査は必ず必要です。歯の根が折れて残っていたり膿んでしまっていたりと見えないところで病気が進行していることがあったりします。
チェックが終わったら歯面を研磨剤をつけてツルツルに磨き、口の中を洗浄したら歯石とりは終了です。その後は、口の周りをきれいにして乾かしてから麻酔から覚まします。

オーナー様が、迎えに来院された際には歯とレントゲンの写真を見ていただきながら現在の状態の説明をし、歯みがきなどのやり方などのアドバイスの説明をして定期的に歯の観察を行いながら健康な歯の状態を保っていけるようにしています。
こんなプレゼントも!

当院で歯石とりや歯科治療を実施した場合は、自宅で再度歯みがきを復習できるように歯みがきのやり方の動画もお渡ししております。

歯周ポケットが一度形成されてしまうと、ほとんど再生することはないため、歯石とりをしてもまたすぐに歯垢や歯石がつきやすくなります。動物の場合は、人で4−5回で治療することを1回の麻酔で全て行います。歯周ポケットの中の治療は、痛みを伴いますし鎌状の器具を使用するため無麻酔でなんか絶対にできません。早い段階で歯石とりを実施することで歯周ポケットの形成を防ぎ、わんちゃんやねこちゃんに対しての麻酔時間も短くなりますし、ひどい場合に比べると痛みもより少なく行うことができます。

歯みがきをできるだけがんばって、どうしても歯石とりが必要なときはなるべく早い段階で考えてあげるように、お願いします。








 

 


歯のトラブル:痛みはないが、頬が腫れている?

■慢性骨炎/歯槽骨炎

わんちゃん、ネコちゃんでは、顔が腫れるのは歯の根っこの周囲に膿がたまることでおきること(根尖周囲膿瘍)が多いのですが、そうでない場合も見受けられます。

先日、歯石とりと歯科検診をしたKちゃん(ネコちゃん、9歳)。

健康診断の時に、歯茎に腫れが見られましたが、痛みもなく、水(膿)が溜まったような柔らかい感触もありませんでした。

歯石の付着もみられていたため、この腫れている所のレントゲンでの確認と歯石とりの処置を実施しました。Kちゃんの顎のレントゲンを撮影すると、この場所は、骨が盛り上がっていることがわかりました。

これは、ここにある歯に炎症・感染が起こり、それに反応して骨が増殖(骨増生)したことにより、歯茎が腫れたと考えられます。

また、右のレントゲン写真から(緑色の矢印)、少しですが反対側の頬も同じような骨増生が見られています。そのため、原因と考えられる歯を抜歯して治療しました。

一般的には、『目の下など、顔が腫れる』や、『頬の皮膚が破れて膿が出てくる』などの症状の原因は、歯の根っこに感染が起こる根尖周囲病巣が多いです。しかし、その他にも、腫瘍や根尖周囲病巣がひどい場合は、顎が骨折してしまっている場合もあります。

腫れや痛みなどがある時は、動物病院への相談が大切です。

一般的な動物病院にあるレントゲンの機械は、胸やお腹などを大きく見る時は、とても有用です。しかし、歯のような厚い頭の骨に囲まれた所を見る時には、歯医者さんで撮るようなレントゲンでないとはっきり見えないことが多いです。
当院では、歯石とりの際には、必ず、歯科レントゲンを用いたレントゲン検査を実施しています。お気軽にご相談ください。

 


犬や猫の歯石の放置は危険です。下顎なら骨折の恐れもあります。

■犬の下顎犬歯の粘膜フラップ形成と組織再生誘導(GTR)

今回は、歯石が重度についているワンちゃんの治療です。
歯石とりの相談にこられた子ですが、前歯にかなり歯石と歯垢が付着しています。
あまり状態も良くなさそうなのですぐに歯石とりと歯科検査・治療を実施しました。

左右の下顎犬歯に歯石がとてもついています。(写真左)
歯石を除去してみると、えぐれたように歯周ポケットが形成されています。(写真中)

レントゲンでも、深い歯周ポケットが確認されました。(レントゲン写真左中)
犬歯にはぐらつきがないため、犬歯の歯石をきれいに除去した後に、歯周ポケットに骨補填剤を埋め、抜歯した切歯の歯肉を利用して粘膜フラップを製作しました。(肉眼写真右、レントゲン写真右)

 

処置後1週間目の写真です。縫合糸はまだ残っていますが、歯肉粘膜がうまく定着してくれたようです。
今後は、がんばって歯磨きをしてもらいながら、うまくポケットが改善されているか定期的に観察することになります。

歯周病が進行すると、深い歯周ポケットを形成してる場合も多く、下顎の場合ひどいときは骨折を引き起こすこともあります。
特に歯の内側は全身麻酔をかけないと詳しく解ることができない場合も多く、麻酔をかけてびっくり!ということも多いです。

当院では、歯石取りや歯の治療以外にも定期的な歯周病のチェックと歯磨きのアドバイス、歯石取りのタイミングなどを詳しくアドバイスしております。おきがるにご相談ください。


犬や猫の口臭や歯石は、思ったよりも早めに検査や治療が必要です。

「犬や猫の歯石、だいぶついてきたからそろそろ歯石とりをしようかな?」
「口臭が気になるから、そろそろ歯石とりをしようかな?」

みなさんは、どのようなタイミングで歯石とりの相談を考えていますか?

上の写真は、歯石とりを希望され来院されたわんちゃんの口の中の写真です。
犬歯には半分ほど、奥歯にはほぼ全面に歯石が付着しています。
このくらいの状態で歯石とりや歯の相談をいただくことが多いです。

口の中の状態は、見た目よりも酷い症状の場合が多いため、このくらい歯石がついている状態だと残念ながら、抜歯をしなければいけない場合も多く遭遇します。

麻酔をかけて近づいてよく歯の状態を観察してみると、
歯石の周りにネバネバした歯垢がたくさん付着しています。


歯石と歯垢を除去してみると、歯肉が退縮していました。歯石は、表面がザラザラしているため歯垢がくっつきやすく細菌が繁殖しやすい状態になるため、歯周病の進行が早まり歯肉の減退や、骨を溶かしていきどんどん症状が悪化していきます。

デンタルレントゲンを撮ってみると、炎症により骨が溶けていました。歯石や歯垢がついたままの状態で放置していれば骨はどんどん溶けていくため、下顎で歯周病が進行している場合は、骨折を引き起こす場合もあります。


治療としては、歯周病によりこれ以上骨が溶けてしまうことを予防するため、抜歯による治療が基本となります。

抜歯した後は、きちんと取り残しがないか確認のデンタルレントゲンを撮ります。取り残しがないことを、確認できたら治療は終了となりますが、他の歯も骨が溶けているため、歯みがきと定期的な歯の検査を行いできるだけ歯周病が悪化しないように定期的なケアが大切になります。

口の中の疾患は、食欲も元気もあるため歯石がついているのは気になるけど、まだうちの子は大丈夫と、なぁなぁになっている場合は意外と多いです。
歯の中の状態は、デンタルレントゲン検査でしか確認できないため、なるべく早めの段階で状態を把握して対策してあげないと、病態が進行してしまい気付いた時には歯を抜くしか方法がなくなってしまう場合が多いのです。

少し早めの歯科相談や歯石とり、歯みがきの習慣化を心がけてあげることで歯を抜かないで済むことができます。犬や猫の口の中の相談は少し早めを心がけてあげましょう。

●こんな症状が見られたら、すぐにご相談・ご来院ください。
□よだれが多い、口の中がネバネバしている
□口の中が臭い
□歯石がついている
□歯茎が赤い
□口の中が出血している
□細菌歯が伸びたきがする
□歯がぐらついている
□食欲がおちてきた
□硬いものを噛まなくなった(食べなくなった)
□口を触ると嫌がるようになった



お口のなかは大丈夫?犬や猫の歯垢(歯石)や歯周病は、命に関わる場合もあります。

犬や猫の歯科診療を実施している中で、歯石や歯周病での相談されることは多いですが、”もう少し早く相談して欲しかった”と思ってしまうケースはかなりたくさんあります。
この写真の、重度の歯周病のわんちゃんもそうでした。
歯がつながってしまうくらいに歯石が蓄積しており歯垢がかなり付着しています。
3日前より全く食べなり、口を触るとかなり痛がるようになったと来院されました。診察していくなかで、以前より体重が2kgほど減っているようです。話を詳しく聞いていくと、2−3ヶ月ほど前からドライフードを食べなくなり柔らかいフードに変更してなんとか食べていたみたいですが、いよいよもって食べなくなってしまい来院されたとのことでした。

健康な子であれば、急に食べなくなったり好みが急に変わったりすることはほとんどありません。いつも食べているものを急に食べなくなるという症状はなんらかの病気のサインである場合が多いです。とくに、犬や猫の歯科疾患の場合には見られやすい症状です。
歯のあたる部分の粘膜は真っ赤に炎症をおこしてしまっています。とても痛そうです。診察に来ていただいた時は、口を触ろうとするとかなり痛がりほとんど診させてもらえませんでした^^;

血液検査でも白血球の増加と炎症マーカーが測定値オーバー…歯原性菌血症をおこし敗血症をおこし始めています;;このままでは危険なためすぐ入院をおすすめして、抗生剤と点滴を投与しながら数日間治療、全身状態の安定化させてから歯科治療を実施しました。
※術後の写真
どの歯もかなりよくない状態のためほとんどの歯を抜歯しています。抜歯したあとは、炎症でできた不良肉芽をできるだけきれいに除去して歯茎を縫合しています。
歯肉のダメージも激しかったため、縫合がとても大変でした。術後は、医原性菌血症も起こすため状態が悪化する恐れもあるため、点滴と抗生剤を全身投与しながら数日間入院して状態を観察してからの退院となります。

※治療前後の写真
粘膜におきていた炎症もほとんど無くなりました。

※治療前後の比較写真少し遠目で。

治療開始後10日目の写真です。縫合部も問題なくくっつきました。血液検査でも白血球数も炎症マーカーも無事に正常値に^^
体重も1kgほどふえており、無事に完治することができました。

口の中は暖かく、湿度もあり、栄養も豊富なため細菌がとても繁殖しやすい環境です。歯垢の中の細菌の数はかなり多く、同じ量のウンチと比較しても圧倒的に歯垢中の細菌の数の方が多いです。

歯周病は、細菌により引き起こされた炎症により歯を支えている顎の骨が溶けていくとても怖い病気です。歯石や歯垢(プラーク)をそのまま放置していると口の中で炎症が起こり咀嚼運動をしたときに口の中血管が切れて出血をおこします。切れた血管の中に細菌が入りこみ菌血症をおこしてしまいます。抵抗力のある若い間は一過性の場合も多いですが、高齢の子や何らかの病気で抵抗力の落ちている子は敗血症に移行してしまい命に関わる程の重篤な状態になることもあります。

わんちゃんやねこちゃんの口の中は、何もやらなくて良いわけではありません。
皮膚病や内臓疾患などと同様に定期的な健康チェックや健康診断はとても大切です。毎日の歯みがき定期的なチェックや歯石取りをしてあげることでほとんどの場合は未然に防ぐことができます。

当院では、犬や猫の歯科治療のほかに、口の状態の観察を行わせていただきよりその子にあった歯みがきのやり方やコツなどを定期的にアドバイスも行っております。
なんとなく歯みがきや歯のケアをするのではなく、よりその子にあったデンタルケアをしてみませんか?

●こんな症状が見られたら、すぐにご相談・ご来院ください。
□よだれが多い、口の中がネバネバしている
□口の中が臭い
□歯石がついている
□歯茎が赤い
□口の中が出血している
□細菌歯が伸びたきがする
□歯がぐらついている
□食欲がおちてきた
□硬いものを噛まなくなった(食べなくなった)
□口を触ると嫌がるようになった