犬や猫に負担と痛みの少ない腹腔鏡下避妊手術をやっています。

ご報告が遅くなりましたが、今年度より犬や猫に低侵襲(痛みや負担が少ない)な腹腔鏡避妊手術を実施するために、腹腔鏡手術(ラパロ)の設備を導入しました。

腹腔鏡手術は、上の写真のようにポートと呼ばれる直径5mmほど穴をお腹に開けて筒状の管を2−3個設置して、そこからガスでお腹を膨らませてカメラや器具をいれモニターを見ながら行う手術法です。

通常行う開腹手術と比べて、傷も小さく内臓を無理に引っ張ったり空気に触れたりすることもないため内臓の損傷が少ないため、とても低侵襲に手術を行うことができます。そのため術後の痛みも少なく回復もスムーズなので犬や猫にできるだけ痛みやストレスを与えずに行うことのできる最善の方法だと思います。

当院では外部より2名の先生にアドバイザーに来ていただき、腹腔鏡手術を行っております。
先日は、犬の避妊手術・肝生検・膀胱結石摘出手術を行いました。
手術前にスタッフ全員で腹腔鏡手術の準備するものや手技などの説明を受け、手術をスムーズに行えるようにしています。スタッフ達も真剣です。^^
モニター越しに見ているお腹の中を静止画で撮ってみました。避妊手術での卵巣(左)・肝生検(中)・膀胱内の結石(右)
通常だと、黙視やお腹をがばっと開けてみないと確認できないところが鮮明に見えるため、とてもわかりやすく内臓の負担を最低限に手術を行えます。

腹腔鏡避妊手術で実施した術後の傷口です。わかりやすいように避妊手術を開腹手術で行なった場合と並べています。今回は2ポート法で腹腔鏡下避妊手術を行ったので2糸の縫合で行えます。避妊手術であれば通常の開腹手術の傷口の1/2〜1/3程度で行うことができます。

腹腔鏡手術は、手術の傷口が少なく痛みや負担が少なく日帰り手術が可能で治りが早いというイメージが一般的ですが、それ以外にもカメラをお腹の中に入れてお腹の中を観察することができるため、お腹の中全体の状態を見ることができるというメリットがとても大きいと思います。

当院では特に避妊手術での腹腔鏡手術をとてもお勧めしています。
傷口が小さく、卵巣や子宮を無理に引っ張らずに手術を行うことができるため開腹手術にくらべるとかなり痛みの状態が軽減されびっくりするくらい元気に退院されていきます。それと同時に、肝臓や腎臓、脾臓などの臓器も観察できるため見える臓器の健康チェックも一緒にできます。
避妊手術は病気ではなく健康な状態で行う予防的な手術になります。健康で病気でない子にメスをいれて手術をするのであれば、腹腔鏡下避妊手術だと低侵襲で同時に健康チェックもできるため現在おすすめできる最善の方法ではないかと思います。

現在当院で実施可能な腹腔鏡手術は、
・避妊手術
・腹腔内停留睾丸(停留精巣・潜在睾丸)摘出術
・膀胱結石摘出手術
・腹腔内臓器の生検(バイプシー)
を行うことができます。その他の手術などをご希望の場合は要相談となります。
腹腔鏡手術をご希望の場合は完全予約制となりますので、お電話にてお問い合わせお願いいたします。


脾臓腫瘍 シニア期から多い病気です。なんとなく食欲がない、元気がない は、年齢のせいだけではないかもしれません。

脾臓の腫瘍は『なんとなく』が多い病気であり、『急に』も多い病気です。

初期の症状は『なんとなく食欲がない、元気がない』などであり、それを心配されて来院されることが多いです。

お腹を痛がる や、吐いている といった症状から脾臓腫瘍を見つける場合もあります。

ひどい時には、ふらついている(立てない)、急に倒れたなど、腫瘍が破裂してしまい、お腹の中に出血してしまい、貧血の症状が出てしまうことで来院される場合もあります。

脾臓の腫瘤は、血腫や過形成性結節と診断された場合は良性の腫瘤のため、手術による摘出後の予後は良好です。

すべての脾臓の腫瘤の1/3〜2/3は悪性腫瘍とも言われています。悪性腫瘍と診断された場合、抗ガン剤などでの積極的な治療もご提示しますが、これらの治療を行ったとしても、完治させることはできません。

しかし、良性の腫瘤であっても徐々に大きくなることが多く、悪性腫瘍で完治しないからとそのままにしておいていいわけではありません。

これは、破裂して大量出血を起こす可能性のある時限爆弾をお腹の中に常に抱えているような状態のため、少しでも早く手術で摘出することをお勧めしています。

以下は、最近来院された脾臓の腫瘤があった4頭のわんちゃん、ねこちゃんについてです。

 

元気、食欲がなくなったため来院されたBちゃん(わんちゃん・15歳)。

お腹の中に大きな出来物がみつかり、レントゲン検査とエコー検査で脾臓の腫瘤がみつかり、脾臓摘出の手術を行いました。

この子の腫瘤は病理検査で、『脂肪肉腫』と診断されました。

今後は、抗がん剤などでの治療になります。

 

同じように元気、食欲がなくなったとのことで来院されたAちゃん(わんちゃん・14歳)とKちゃん(わんちゃん・10歳)も、エコー検査で脾臓の大きな腫瘤がみつかりました。

Bちゃんと同じように脾臓摘出の手術を行い、病理検査に出したところ、結果は、『脾臓の血腫』という診断で、良性でした。

Aちゃん、Kちゃんの場合は、体調が戻れば、この治療は終了になります。

 

また、ネコちゃん(Kちゃん・8歳)でも同じような症状で脾臓の腫瘤がみつかり、脾臓摘出手術を行い、病理検査で『血管肉腫』と診断された子もいます(わんちゃんで多く、ネコちゃんでは稀な腫瘍です)。

この腫瘍は、わんちゃんの場合は抗がん剤での治療になりますが、ネコちゃんではまだ有効な治療法は確立されていません。

 

健康診断をした子で、脾臓に小さな腫瘤が見つかる子も少なくありません。

その場合は、その腫瘤に針を刺して細胞を取って検査(針生検)を行ったり、定期的なエコー検査をお勧めしています。針生検で良性の場合でも、大きくなってくるなら脾臓摘出をご相談していくようになります。もし、悪性の疑いがあったり、悪性腫瘍と診断された場合は、早めの手術をお勧めすることが多いです。

 

早期に発見することで、具合が悪くなる前に対応することが可能です‼︎

そのためにも、8歳以下の子は1年に1回、8歳以上の子は1年に2回の定期的な健康診断をしましょう。

当院の健康診断は、『お気軽コース』『しっかりコース』と2つのプランをご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 


肝・胆道系疾患:犬や猫の肝臓病や胆道系疾患は無症状で進行していくとても怖い病気です。肝臓や胆嚢は健康ですか?健康診断などの検査で定期的にチェックをお勧めします。

先日の投稿でも8月は重症の子が入院や手術をしたりと投稿しましたが、今回は、その入院していた病気について(肝胆道系疾患)のお話を書こうと思います。

■肝胆道系疾患:肝臓と胆嚢を合わせて肝胆道系と言います。
肝臓と胆嚢は、胸とお腹の境界にある臓器です。肺から横隔膜を隔てて肝臓があり肝臓に包まれるように胆嚢があります。肝臓は、胃や十二指腸を包むようにあり、内臓の中では一番大きな臓器で生命を維持するために様々な仕事をする大切な臓器の一つです。

肝臓は、栄養素を代謝したり・コレステロールを胆汁に作り変えて小腸に分泌したり、エネルギー源を蓄えて貯蔵したり、体の中の有害物質を解毒して無毒化したり生命を守るためにたくさんの働きをしています。また、再生力と予備能力が非常に高い臓器で肝臓全体の4/5以上ダメージを受けても症状をださずに体を守るために自分の仕事をやり遂げようとする臓器です。そのため、「沈黙の臓器」と呼ばれ病気があったとしても症状がほとんど出ずに知らない間に病気が進行してしまい、手遅れになってしまうこともあります。

一方胆嚢は、肝臓で分泌された胆汁を濃縮し貯蔵する組織です。小腸に脂肪が入ってくると貯蔵された胆汁が胆嚢から放出されて総胆管を介して十二指腸へ分泌されます。


十二指腸には、総胆管(肝臓や胆嚢から胆汁を分泌する管)と主膵管(膵臓から膵液を分泌する管)があり、どちらも十二指腸を介して近くに存在するため小腸(十二指腸)・肝臓・膵臓のどこかの臓器で炎症が起きると残り2つの臓器にも炎症が波及してしまうこともあります。この病態は、三臓器炎と呼ばれ猫は総胆管と主膵管が一緒になっているため起こりやすい病気です。
炎症以外にも、胆管閉塞や胆嚢粘液嚢腫、肝不全や肝硬変、腫瘍など様々な病気になることがあります。

肝胆道系疾患
原因は?
 ①ジャーキー類の高カロリーで高脂肪なおやつ
 ②内分泌系の異常(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症)
 ③細菌感染
などがあげられます。特に、ジャーキーなどのおやつ類をたくさんあげている場合は、2〜3歳位でも胆泥症が見られたりする場合も多いです。

症状は?
 ①食欲の低下や廃絶
 ②吐き気や下痢
 ③腹部痛
 ④黄疸(白目や口の中、白い毛が黄色くなるなど)
などがよくあげられる症状ですが、ほとんどの子は無症状の場合が多いです。①〜④の症状が見られた場合は、重症化している場合が多いです。

検査は?
 ①画像診断:レントゲン検査や超音波検査、CT検査など
 ②血液検査:血球計算、生化学検査、炎症マーカー、膵炎マーカー、凝固機能検査など
 健康診断などで偶然見つからる場合も多いですが、検査などで見つかっても無症状の場合が多いです。その場合は、定期的チェックしながら経過観察を行ったり、食事の改善や内服薬などで予防や治療を行ったりもします。

治療は?
 無症状や軽症の場合
 ①内科治療:抗生剤や強肝剤、胆汁の排泄を促す薬などを使用します。
 ②食生活の改善:バランスの良い食生活にしていきます。

 何らかの症状が見られ病態が重い場合や胆嚢破裂など緊急度が高い場合
 ③外科手術:胆嚢切除、総胆管洗浄、腫瘍切除、肝臓生検など
       肝臓や胆嚢の病態に沿った手術を実施します。

今回ご紹介する、肝胆道系疾患になってしまった子は、Rちゃん11歳。
3〜4日前から食欲と元気がなく、食べたものを全部吐いてしまうと来院された子です。いつも元気いっぱいに爪切りに来院されるのに、明らかに元気もなく症状が重そうな状態でした。

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歯の病気は見た目ではわかりません‼︎ 歯科レントゲンでのチェックが大切です

今回は、スケーリング(歯石とり)に起こったお話です。

歯石がついているとのことで来院したSちゃん。

先日、全身麻酔下でのスケーリングと歯科検診を実施しました。

上の写真は、スケーリングの後の歯科検診の時の写真です。

赤い矢印の歯が、今回のお話の歯です。

この歯は、歯石も少なく、歯茎の腫れや赤みもなく、とてもきれいに見えます。

触ってみると、ほんの少しぐらつきがありました。

        

歯科レントゲンで確認すると、この歯は歯茎の中で折れていることがわかりました。

折れた歯をそのまま放置していると、感染を起こして歯茎が腫れてしまったり、化膿したり、歯槽骨(顎の骨)を溶かしてしまい他の歯にも影響を及ぼしたり、ひどい場合には骨折をしたり腫瘍ができたりしてしまうこともあります。

今回は、抜歯治療をしました。

上の写真のように、残根(歯の根っこが残ること)がないように、歯科レントゲンで確認しながら抜歯をします。

上の写真のように、残根がないことが確認されたため、治療は終了です。

以前に抜歯をしてもらったことがある子の来院も多いですが、残根があるのに歯科レントゲンで確認されず、そのまま放置されていて、当院でのスケーリングの時にたまたま見つかるということもあります。

Sちゃんは数年前にも当院でスケーリングをしていて、その時の歯科レントゲンを確認すると、この歯は折れてはいませんでした。お迎えの時にオーナー様に確認すると、口を痛がる様子もなかったため、前歯が折れていることには気づかなかったそうです。

 

今回のように、歯の状態は見た目だけではわからないことも多いのです。

 

当院でのスケーリングは、歯科検診と歯のレントゲン写真でのすべての歯の観察がセットになったもので、今回のように、まだ症状のでていない歯の疾患の見逃しがないようにしています。

 

また、硬すぎるものを噛むことは歯を折ってしまう原因になりますし、硬いものを噛ませることが歯みがきの代わりになることはありませんので注意しましょう‼

 

嫌がる子も多い歯みがきですが、歯みがきペーストなどを使って美味しく、褒めながら楽しく歯みがきができるように頑張りましょう!

 

歯みがきが上手にできない、歯の状態や歯石などを見て欲しい などのご相談は、いつでもお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。


よく「老人イボ」と言われる皮膚に発生する腫瘤(イボ・できもの)。多くの場合は良性ですが、悪性の場合もあるため注意が必要です。ひどくなり全身麻酔ができない場合に、レーザー蒸散法という方法もあります。

こんばんわ。仙台は本日で27日連続の雨…
雨は嫌ですが、気温も涼しく熱中症の子も今年は少なくて、今シーズンはすごしやすくていいなと思っていたら。病院内の洗濯物が乾かない!乾燥機がフル稼働…病院裏は猛暑となっております。今回は、最近治療していた局所麻酔での半導体レーザー蒸散法で皮膚の腫瘤(イボ)のお話です。

頭や背中などにぽこっとできた「イボ(できもの)」。「老人イボ」だから大丈夫!といわれたと、聞くことも多いです。多くの場合は良性腫瘍ですが、中には悪性の場合もありますのでそのまま放置していても100%大丈夫というわけではありません。

皮膚にできた腫瘤(イボ)


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"よく「老人イボ」と言われる皮膚に発生する腫瘤(イボ・できもの)。多くの場合は良性ですが、悪性の場合もあるため注意が必要です。ひどくなり全身麻酔ができない場合に、レーザー蒸散法という方法もあります。" の続きを読む