お口のなかは大丈夫?犬や猫の歯垢(歯石)や歯周病は、命に関わる場合もあります。

犬や猫の歯科診療を実施している中で、歯石や歯周病での相談されることは多いですが、”もう少し早く相談して欲しかった”と思ってしまうケースはかなりたくさんあります。
この写真の、重度の歯周病のわんちゃんもそうでした。
歯がつながってしまうくらいに歯石が蓄積しており歯垢がかなり付着しています。
3日前より全く食べなり、口を触るとかなり痛がるようになったと来院されました。診察していくなかで、以前より体重が2kgほど減っているようです。話を詳しく聞いていくと、2−3ヶ月ほど前からドライフードを食べなくなり柔らかいフードに変更してなんとか食べていたみたいですが、いよいよもって食べなくなってしまい来院されたとのことでした。

健康な子であれば、急に食べなくなったり好みが急に変わったりすることはほとんどありません。いつも食べているものを急に食べなくなるという症状はなんらかの病気のサインである場合が多いです。とくに、犬や猫の歯科疾患の場合には見られやすい症状です。
歯のあたる部分の粘膜は真っ赤に炎症をおこしてしまっています。とても痛そうです。診察に来ていただいた時は、口を触ろうとするとかなり痛がりほとんど診させてもらえませんでした^^;

血液検査でも白血球の増加と炎症マーカーが測定値オーバー…歯原性菌血症をおこし敗血症をおこし始めています;;このままでは危険なためすぐ入院をおすすめして、抗生剤と点滴を投与しながら数日間治療、全身状態の安定化させてから歯科治療を実施しました。
※術後の写真
どの歯もかなりよくない状態のためほとんどの歯を抜歯しています。抜歯したあとは、炎症でできた不良肉芽をできるだけきれいに除去して歯茎を縫合しています。
歯肉のダメージも激しかったため、縫合がとても大変でした。術後は、医原性菌血症も起こすため状態が悪化する恐れもあるため、点滴と抗生剤を全身投与しながら数日間入院して状態を観察してからの退院となります。

※治療前後の写真
粘膜におきていた炎症もほとんど無くなりました。

※治療前後の比較写真少し遠目で。

治療開始後10日目の写真です。縫合部も問題なくくっつきました。血液検査でも白血球数も炎症マーカーも無事に正常値に^^
体重も1kgほどふえており、無事に完治することができました。

口の中は暖かく、湿度もあり、栄養も豊富なため細菌がとても繁殖しやすい環境です。歯垢の中の細菌の数はかなり多く、同じ量のウンチと比較しても圧倒的に歯垢中の細菌の数の方が多いです。

歯周病は、細菌により引き起こされた炎症により歯を支えている顎の骨が溶けていくとても怖い病気です。歯石や歯垢(プラーク)をそのまま放置していると口の中で炎症が起こり咀嚼運動をしたときに口の中血管が切れて出血をおこします。切れた血管の中に細菌が入りこみ菌血症をおこしてしまいます。抵抗力のある若い間は一過性の場合も多いですが、高齢の子や何らかの病気で抵抗力の落ちている子は敗血症に移行してしまい命に関わる程の重篤な状態になることもあります。

わんちゃんやねこちゃんの口の中は、何もやらなくて良いわけではありません。
皮膚病や内臓疾患などと同様に定期的な健康チェックや健康診断はとても大切です。毎日の歯みがき定期的なチェックや歯石取りをしてあげることでほとんどの場合は未然に防ぐことができます。

当院では、犬や猫の歯科治療のほかに、口の状態の観察を行わせていただきよりその子にあった歯みがきのやり方やコツなどを定期的にアドバイスも行っております。
なんとなく歯みがきや歯のケアをするのではなく、よりその子にあったデンタルケアをしてみませんか?

●こんな症状が見られたら、すぐにご相談・ご来院ください。
□よだれが多い、口の中がネバネバしている
□口の中が臭い
□歯石がついている
□歯茎が赤い
□口の中が出血している
□細菌歯が伸びたきがする
□歯がぐらついている
□食欲がおちてきた
□硬いものを噛まなくなった(食べなくなった)
□口を触ると嫌がるようになった