犬や猫の耳の構造について:犬の外耳炎は慢性化するとなかなか治らない病気です。耳を掻く、こする、臭う、耳垢減らないは要注意!早めに対策してあげましょう。

外耳炎とは?
外耳炎は、診療の中でも特に来院されることが多い病気です。
耳が臭い、掃除をしてもすぐに汚れる、耳が赤い、痒がる、頭を振る、頭を押し付ける、床に擦り付けるなどの症状がみられて来院されます。
今回は、耳の構造を説明します。すこしずつ、外耳炎について勉強していきましょう。

①耳の構造について

耳は外から耳介(耳の内側)から外耳孔(耳の穴)になり、外耳孔の奥がトンネル状の耳道になり鼓膜まで筒状になっています。

この耳介から耳道・鼓膜の手前までを「外耳」と呼び、集音や音源の発生源の特定をします。鼓膜の奥の空間は「中耳」と呼び、耳の防御や排水、換気の役目をしています。最後に奥のぐるぐるしたカタツムリみたいな骨を「内耳」と呼び、音を神経刺激に変換したり、旋回の認知や重力を脳に伝える役目をしています。

外耳炎は、耳介や鼓膜の手前まで炎症が起こることを指し、外耳炎が重症化して鼓膜に穴が空いてしまいうと中耳炎を引き起こしてしまいます。中耳は顔面神経や眼科領域の自律神経が隣接してあるため顔面麻痺やホルネル症候群などの神経症状も起こります。炎症がさらにひどくなると内耳に炎症が波及し、難聴・眼振や斜頸などの神経症状がでてきます。

犬や猫の耳道は、人と違い直線ではなく、L字型の構造をしており入り口付近の縦に落ちる耳道を「垂直耳道」鼓膜までの横に走る耳道を「水平耳道」と呼ばれています。耳道は皮脂腺アポクリン腺(耳垢腺)などを含む薄い皮膚で覆われており細かい耳毛が生えています。これらの腺から分泌される分泌液と角化物から耳垢が作られ、この耳垢には脂肪酸や免疫グロブリンなどの抗菌・抗真菌作用が含まれていて感染を防御しています。耳道の皮膚は鼓膜付近で作られて耳介の方に徐々に移動しいき、古くなった皮膚や異物を分泌物で耳垢にしながら外に排泄して耳の中を清潔な状態に保っています。

正常な耳は、自分の体の作用によって細菌や異物などの感染から防御されています。外耳炎になっている犬猫は線の分泌バランスが変化してると言われ、耳道の中の脂質の割合が変化し、湿度と温度が上昇して外耳炎を起こしやすくなると言われています。特に耳の垂れた犬種は、耳道内の通気性が悪いので湿度や温度が高くなりやすいです。ジメジメして水分があるため、細菌やマラセチアなどが繁殖しやすい条件が整ってしまい外耳炎を引き起こしやすくなるのです。

外耳炎の治療は、この原因の基を治療しないと再発が多くなったり、慢性化しやすくなってしまいます。
次回は、鼓膜についてお話ししたいと思います。

 


内視鏡のおはなしの事例集

内視鏡のおはなしに関しての事例集です。
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事例集以外のまめ知識も随時更新していきますのでお楽しみに♪

1.耳の内視鏡<VOS(ビデオオトスコープ)>の目次
   犬や猫の耳の病気に使用する内視鏡のお話です。
   VOS(ビデオオトスコープ)を用いた治療法は、新しい犬や猫の外耳炎の
   治療の方法です。通常の耳鏡よりより詳しく観察し治療をしてあげること
   ができます。


⇨胃腸の内視鏡の目次
   一番身近な内視鏡。胃カメラについてのお話です。食道や胃、十二指腸、
   大腸を観察することができます。また、異物の摘出や腫瘍などのできもの
   を検査や治療をすることができます。 

3.⇨鼻・膀胱鏡の目次
   鼻や膀胱の中を覗ける極細の内視鏡のお話です。鼻の中と尿道や膀胱の中
   の異物や出来物を検査や治療をすることができます。

 

4.⇨腹腔鏡手術の目次
   胸やお腹の中を覗く内視鏡を用いた手術のお話です。
   直径3-5mmの穴を2−3個開けて、そこからカメラと手術器具を用いて
   モニターを見ながら手術を行うことができます。


心臓のおはなしの事例集

心臓の治療に関しての事例集です。
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事例集以外のまめ知識も随時更新していきますのでお楽しみに♪

1.僧帽弁閉鎖不全症
   ⇒2017.07.20僧帽弁閉鎖不全症(犬)
2.

その他
   ⇨2017.08.29犬フィラリア症ミクロフィラリア動画


歯のおはなしの事例集

歯の治療に関しての事例集です。
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事例集以外のまめ知識も随時更新していきますのでお楽しみに♪

もくじ
1.歯周病、歯垢(歯石)
   ⇨2018.10.26重度歯周病(歯石)&菌血症
   ⇨2018.11.16重度歯周病(歯石)
   ⇨2020.02.10重度歯周病:下顎犬歯粘膜フラップ形成とGFR(組織再生誘導)
   ⇨2020.02.14猫の歯周病:慢性骨炎/歯槽骨炎
   ⇨2023.09.15犬1歳の歯周病(歯石取り)
   ⇨2023.11.20犬5歳の歯周病(炎)
    ⇨⇨⇨3日後の経過
 
2.歯牙破折
   ⇨2017.09.10右下顎第3切歯破折(犬)
   ⇨2017.10.21左上顎第4全臼歯破折(犬)

3.口鼻瘻管
   ⇨2017.10.09左上顎第3切歯口鼻瘻管(犬)

4.埋伏歯(萌出障害/萌出異常)
   ⇒2017.07.17下顎第1前臼歯埋伏歯(犬)

5.矯正歯科
   ⇒2017.07.28無麻酔矯正法(子犬)

6.歯髄保存治療(歯内治療)
   ⇨
2017.07.28左上顎犬歯抜髄根管治療(犬)
   
2017.10.21左上顎第4全臼歯抜髄根管治療(犬)

7.歯冠修復
   ⇨
2024.01.09右下顎第1後臼歯CR歯冠修復(犬)

8.その他
   ⇨2023.03.02歯周病⇨犬の趾間炎の治療


僧帽弁閉鎖不全症:元気がない、散歩に行きたがらない、急に咳をするようになったなどの症状には要注意!僧帽弁閉鎖不全症は犬の心臓病の中で最も多い心臓病です。

僧帽弁閉鎖不全症(MR)は、犬の心臓病の中で最も多い病気です。

僧帽弁は、心臓の左側の左心房と左心室の間にある弁で、肺から酸素をもらって来た血液を一定方向に流れるようにロックをかける弁です。肺から新鮮な酸素を血液がもらい、左心房⇨左心室に戻ってくると一気に心臓が収縮して全身に血液を送り出します。この時に「僧帽弁」は肺に血液が逆流しないようにしっかりと閉じていなければいけません。

ところが、マルチーズ、シーズ、ポメラニアン、プードル、チワワやキャバリアなどの小型犬の多くは、加齢とともに粘液変性にて弁が肥厚したり、弁を支持している腱策が断裂したりして血液の一部が左心房に逆流するようになります。発生初期は、無症状で心雑音が聴診できるだけですが、進行すると血液の逆流で肺がうっ血してしまい、呼吸が苦しくなって来て、元気が無くなったり、疲れやすくなって来たりして来ます。さらに症状が進んでくると肺胞に水が溜まってくる肺水腫を引き起こして咳が見られるようになり、呼吸困難や酸素欠乏を引き起こして最終的には死に向かってしまいます。
今回の子は、Tちゃん。
食欲ムラと1ヶ月前くらいから咳をするようになり散歩中も疲れて横になるとと来院された子です。来院した時には、待合室でも咳が聞こえて、診察してすぐに、心雑音が聴診されました。すぐにレントゲン撮影をして心臓の肥大と肺水腫を確認し、エコー検査にて僧帽弁逆流を見つけ投薬を開始しました。



 

 

治療薬には、ACE阻害薬、血管拡張薬、強心薬、β遮断薬、利尿剤などを用います。今回は、循環動態があまり良くなかったため、利尿剤を投与しながら状態を見て何週間かかけて少しずつ薬利尿剤の減薬と内服薬の追加をしていきます。

治療開始0日目(左)→30日目(右)の写真

日常の生活では、ほとんど咳もしなくなり散歩も元気にいっているそうです。
だいぶうっ血も改善され、肺水腫も改善されてきましたが状態も悪かったため通院の間隔を徐々に長めにしていきながら内服薬の調整をまだ調整している途中です。

僧帽弁閉鎖不全症は、治療的には内科療法と外科療法がありますが、外科療法ができる施設は限られており、現在は内科療法がメインで治療されることが多い病気です。内科療法では、弁を治す治療ではなく、できるだけ心臓の負担を少なくして、心筋の変性を防ぐ治療をします。内服をしても徐々に進行して行くので症状に合わせて強心薬やβ遮断薬、利尿剤などの薬を追加していきます。僧帽弁閉鎖不全症は、初期の症状がないときの治療をどうするかが悩みどころの病気です。
心雑音が聴診されたら、レントゲン検査やエコー検査など心臓の状態をまずはチェックして見て適切なタイミングを獣医師と相談しながら治療を始めてあげることをお勧めしています。
当院では無症状期は、半年に1回程度、症状が出始めてきたら3~6ヶ月に1回の定期的な検診をお勧めしています。心雑音が聞こえる、心臓病の症状が改善しないなどの時にはぜひお気軽に、ご相談してください。